素敵な男達

エキストラという仕事がある。
ドラマや映画で通行人や人がいるべきところに
いてもらう為の基本的に台詞のない仕事だ。
レストランやカフェやクラブや居酒屋で演技をする役者達の背景になって他のお客さんを演じる。
それこそ子供から老人まで色んな人がいる。
この人たちはだいたい他に仕事を持ちながら事務所にエキストラの登録している。
エキストラ事務所はドラマの制作側からの要望に応えてそれに合った人達を現場に送りだしているのだ。
したがって演技力などというものは全く求められないし、必要ない。事前の役づくりみたいなものもいらない。もし必要ならそれなりの人を使う。

今日から新しいドラマの撮影に入った。
私は直接関係しないがこのドラマには
「オカマバー」が出てくる。
この「オカマバー」に出演する為に5人のエキストラが控え室にいた。
控え室といってもスタジオと違ってロケなので部屋を借りているだけだ。しかも横浜の場末のさびれた、かつてはクラブであったであろうという場所をだ。

そこに女装をした5人がいた。
普段は普通のおっさんである人たちだ。
控え室に入って驚いた。
「役づくり」が出来ている!
それは仕草や会話からそう思えた。
スカートを履いているもんだから自然と膝を閉じて内股になる。薄くなった頭に長い髪のカツラをかぶるもんだから指が自然に髪をとく。

一人がトイレから出てきた。
「いやーん。オシッコひっかけてしもーたぁー。女の子の苦労する気持ちわかるわぁー」
もうひとつ意味はわからんがなにか納得している。

「いやぁ、あんたぁ、このストラップおまけでついてたやつでしょぉう」
女装したおっさんが別の女の格好したおっさんの携帯をみてこう言った。
「そうよぉう。あたし、おまけついてるやつしか買わないわよぉう」
「あたしもよー。なんか同じお茶ならおまけついてるの買うわよねー」
しっかりしてるのか、まんまとのせられてるのか。

「あー、この感触ぅー久しぶりぃー」
前髪を確かめながらうっとりする赤いルージュのおっさん。

見事だ。
完全に「オカマちゃん」だ。
朝一番から私のモチベーションも上がった事はいうまでもないだろう。

その後撮影を終えた「オカマちゃん」達は普通のおっさんに戻って帰っていった。
その後ろ姿は一仕事終えた充実感、メイクとカツラをとった開放感で
「輝いて」いた。

今日の画像も本文とは関係ないさ。

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