愚痴だけじゃないよ

街を歩いているといろんな人に出会う。
出会うというか見かける。
のんびり歩いてる人。急いでる人。チャリンコ乗ってる人。
さて、このチャリンコ乗ってる人ってのに食わせ者が多い。特に女性。
まず、大抵の女性は前しか見てない。
悪い意味で進行方向にだけ集中している。
おばちゃんはちょっとした事ですぐチャリンコから降りる。どこでも。道の真ん中でも。後ろから他のチャリンコが迫っててもだ。
それから歩道にチャリンコを置いてどこか買い物に行った後。
帰る為に、並んで置いてある中から自分のチャリンコを出す時にまず後ろを見ていない。
何故ちょっと後ろを確認しないのか。
しかもぶつかってから後ろに気付く。

それからただ歩くだけでも邪魔なのが「Gメン歩き」だ。
何故か団体で横に拡がって歩いている。
しかも大概トロい。
後ろからチャリンコでベルを鳴らすと十戒のように団体が崩れて真ん中が空くのだがまた元通りにGメンになる。不思議だ。
だから歩いていても目的地に辿り着くまでにストレスを感じてしまう。
ま、私の歩く速度が速いのも原因の一つだがね。

おもしろい人を見かける事もある。
我が家の近所には、いつもチャリンコに乗ってはっきり滑舌よく大きな声で喋ってるすっきり刈り上げのおっさんがいる。
誰かに喋りかけてるわけでもない。自問自答しているわけでもない。ただいろんな事を喋ってる。
時には政治について。時にはどこかの店について。
今日は天気についてだ。
「・・・こう寒いというのはおかしいね。5月というと本来・・・」
なにしろチャリンコに乗ったおっさんだ。
ドップラー効果で去って行く。

あと多いのは携帯で話す、メールする、という奴らか。
メールしながらはとにかくあんまり前を見ていないのですれ違うこちらが変に緊張したりする。
歩きながら電話で話してる人も今ではあたりまえだが、ちょっと前までは不思議な事だったぞ。

では最後に今日見かけたこんな人。
私がチャリンコで追い抜こうとしたちょうどその時、そのサラリーマンらしき男がこう言ったさ。

「俺、パパになったよ!」

もちろん話している相手は誰かはわからない。
故郷の両親か、あるいは地元の友人だろうか。
ただ私は心の中で「おめでとう」と呟いたね。
何故かあったかい気持ちで家に帰れたよ。

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